unconscious 脳

完成しない何かを書くADHD脳の片付かない本棚~Energy is circulating

小説「エンドレスキューブ」<1990年代頃>

「エンドレスキューブ」5

放置された画材。破れたままのキャンバス。それはひとつのオブジェのように見える。そう、長野はオブジェにしてしまったのかもしれない。ある、優越をどこかに感じながら。だが、見つめることも、触れることも出来ない。それを背にして、煙草を吸った。 日曜…

「エンドレスキューブ」4

夢を見ていた。狩野の背中があって、女がいる。私の横顔が手前にある。夢の中の私は、泣いていない。まるで。夢の自分と肉の自分が、引き裂かれて、悲鳴のように泣き叫んで起きた。狩野の背中。いや誰の。 大学には行かなくなった。たぐりよせる夜が続いてい…

「エンドレスキューブ」3

クラブの壁は真っ黒に塗り込められている。長野が、黒のペンキをぶちまけて絶叫し、狂ったように黒を塗り続けた。地下へ降りる階段。群れているやつら。視線。そこにドアがある。開けた瞬間に鼓動は侵される。空気は膨張するように充満している。一定のリズ…

「エンドレスキューブ」2

ギャラリーは白い壁に面積を失っている。照明は影をも照らし出している。遠く白髪の老人がいる。一つの彫刻の前に私は立っている。存在が変化でしかないならば、これは果たして「ある」のだろうか。これらは私の中に入り、或は私が入って行って、同化する。…

「エンドレスキューブ」1

――けしの花。咲いた次の日に散ってしまうの。白は「忘却」赤は「妄想」。手は、青白く揺らぐグラスを滑り床に落ちる。夜は気だるく目暈のような夏の太陽の影だ。長野は灰色と同化している。壁に背中を押し込めて。――ジリジリする、肺。ねぇ、もう吐いちゃっ…