unconscious 脳

完成しない何かを書くADHD脳の片付かない本棚

「エンドレスキューブ」1

――けしの花。咲いた次の日に散ってしまうの。白は「忘却」赤は「妄想」。
手は、青白く揺らぐグラスを滑り床に落ちる。夜は気だるく目暈のような夏の太陽の影だ。
長野は灰色と同化している。壁に背中を押し込めて。――ジリジリする、肺。ねぇ、もう吐いちゃっていい?
――あぁ。
リズムは流れる。足の指先から入り、脊髄のあたりを刺激している。リズム。心臓の。
――眠い、すごく。月。
窓の外を指さす。しかし月は見えない。

――ねぇ。
私はずっとしゃべっている。言葉は喉から漏れ、床を這う。崩れる。風化する。だが、身体の中を巡りづづける。
欠落したものはなくなってはいない。欠落した穴には時は流れ落ち、記憶は歪む。
脳がぐらついてくる。肌に触れたくなる。鎖場の鎖にしがみつくように。

長野はじっと、触れられるままになっている。けれど気づいている。
そうしてゆっくりと彼の指に触れていく。それをいつまでも繰り返してゆく。
息をゆっくりと吐く。
――さらさらしてる。肌さらさらしてるね。
そして目を閉じる。