unconscious 脳

完成しない何かを書くADHD脳の片付かない本棚

2020-03-10から1日間の記事一覧

「断層」3 海綿

どれだけの時が経ったのかわからない。数秒も経っていないのかもしれない。ただ耳の中を蝉が支配し、時は停止したようだった。 公園の声が蝉を掻き消した時、少女は瞳を見開き後ろを見た。風が瞳を刺した。駈けた。 ぬかるみに脚をとられながら、深い草地か…

「断層」2 少女

あの少女。 白い脚。 公園の裏手を流れる小さな川沿いは、夏に雑草が生い茂る。長く雨が続いた。水溜まりの残る公園に子供達の声が響いている。 公園を走り回る少年たちの横には、ブランコをベンチ代わりにした三人の少女がいる。一人は、腰に手をあてすでに…

「断層」6 K

女、そう女。 女は瞳をゆっくりと開ける。換気扇、ユニットバスの白い壁。視界が仕切られる。視界が脳を仕切る。上向きに沈めた上半身を浴槽から起こしてゆく。水面から出た冷えた脚、それは細く質感が落ちている、それでも女が最もお気に入りの脚、それを既…

「断層」5 浴室

浴室に私はいる。顔だけを水面から出し、瞳を閉じる。髪は放射線に解放され、私から離れてゆく。心臓の音が微かに聞こえる。 映像が時間とともに積み重なり、一人の人間が作られる。いくつもの層、幾重にもなり、すでにそれらは地下深くに沈んでいる。取り出…