unconscious 脳

完成しない何かを書くADHD脳の片付かない本棚

「断層」2 少女

あの少女。

 

白い脚。


公園の裏手を流れる小さな川沿いは、夏に雑草が生い茂る。
長く雨が続いた。水溜まりの残る公園に子供達の声が響いている。

公園を走り回る少年たちの横には、ブランコをベンチ代わりにした三人の少女がいる。一人は、腰に手をあてすでに主婦のような口振りで何やら話し続けていて、一人は時折、視線をチラと男子に向けると、両手を口にあて隠すように笑った。
もう一人の少女。二人よりは幼い。少し勝ち気な瞳、ショートカットから覗く横顔は何を見ているのだろう、話には無関心なようだ。まっすぐに伸びた脚をバランスよく使い、ブランコをこぎ続けている。スカートがそれに合わせて規則正しくほんの少しめくれた。


子供が子供らしいと思えるのは大人だけで、少年にしろ少女にしろ複雑化していく精神の予兆としての根を張らし始めていた。


男子の中ではいつでも無意識に、社会が組織されるらしい。それは崩れることなく、何か他に予定があれのか、それぞれに自転車に乗り公園を去っていった。
その声が遠ざかっていく。

少女は最後、目一杯ブランコをこぐと、ヒラリと飛び降りた。年上らしき二人が連れだってトイレに行ったすきに、公園を隔てるフェンスの隙間から、肩を超えるほどの雑草のなかに入っていった。
それは好奇心と言うには、興味や興奮がの欠如していた。解放を感じたかったのかもしれない。川のそばへと向かっていた。


住宅街の手前に最近綺麗なアパートが建った。リゾート地のコテージのような造りで、窓が縦に長い。
その一階の五つ目の白いカーテンが揺れている。

雑草は肌に気持ち悪く、土の蒸気が鼻に付く。
やっとわずかなセメントと土の境目まで来たときに、その五つ目の窓の正面であることにハッとして、積まれたブロックの横に知らず身を隠した。


奥に白い脚が見える。
それは横たわったまま、左右に力なく組まれていた。外から見える室内は暗く、脚だけが浮かび上がり、そしてやけに無防備だった。風にカーテンが大きく揺れた。
組まれた脚が解かれ、不自然な角度で動くのを見ていた。


陽は少女の横顔を射す。
蝉が鳴いていた。