unconscious 脳

完成しない何かを書くADHD脳の片付かない本棚

「断層」6 K

女、そう女。

女は瞳をゆっくりと開ける。換気扇、ユニットバスの白い壁。視界が仕切られる。視界が脳を仕切る。
上向きに沈めた上半身を浴槽から起こしてゆく。水面から出た冷えた脚、それは細く質感が落ちている、それでも女が最もお気に入りの脚、それを既にぬるくなった湯に戻した。
肩から胸元の白い肌が浮き立って見える。全身の白い肌は透き通るようで、内腿に青く細い血管を透いている。強く見える外面の内側に潜む見え隠れする繊細さに似て、だがそこにも血が走っていた。
内腿に血管が浮くのは淫乱の証だよ。誰が言ったのだろう。さほど淫乱な気はしていない。だが、あれがそうだというなら、そういう部分はあるのだろう。
興奮すると内腿が赤くなる。男、誰か男が言う。それを見たい、その自身の姿を見たいと思った。

電話、携帯の着信音がリビングから微かに聞こえる。女は再び頭を水面に沈め、音が止まるのを待った。
それからゆっくりと立ち上がり、タオルで髪をふきながら浴室を出る。裸体のままリビングへ向かう。その頃にはもう三度目の携帯音が鳴っている。
K。小さな画面に名が記されている。それをソファの上に放り投げる、そのままベッドルームへ向かう。
携帯音は鳴り止まない。
K。女はその音を聞きながら、ゆっくりと内腿へと手をやる。