都市伝説がカオス化している。もともとなのかもしれない。
あるいは伝説ではなくなっているのかもしれない。
Sは数日、脳のグラグラがとれなかった。何か今まで持っていた違和感が一致するような気がした。
それでもさらに違和感が否めない。イヤホンから流れる何ヘルツかの音に誘導されているようで、瞼をキツク閉じて頭をふった。
確かに。
陰謀は陰謀を呼んでいく。それはひとつの流れだ。繰り返される、繰り返された流れ。あくまでひとつの。
それぞれの思考の中の現実、その中にいる。それだけ。
信じるのは、何か。
ふと、「個」、とそう思いそれは消えていった。
ウイルスの管理にAIが使われている。GPSでの管理だ。
それは、いつからだったのだろう。
動作が悪い朝だ。
ねえ、またダウンロード忘れたでしょ。昨夜されるって言ってたじゃない。覗き込むように女が言う。
ああ。めまいがする。
外してよチップ、ダウンロードしておくから。外さないと出来ないんだから、あなたの古くて。
いや、少しこのままでいい。何かずっと映像が流れてるんだ。
それ、モニター映してみて。Sは上半身を少し起こしてモニターに視線を向ける。
画質が悪い。女の子がペンとノートに何かを書いている。白い子犬がいる。
何か勉強してる映像だね。
何?勉強って。何語?
勉強だよ。学ぶこと。そうだな、例えば知識が増えること。
またよくわからないこと言うのね。ほんといつも意味がわからない。
確かに余計な知識はいらないのかもしれない。
G20になったわ。
そう言って、女はベットを離れた。
女はバージョンアップされたようだ。そして何かが消されている。
そう、脳の。
ビービー
指先のチップの警報がなる。新しいウイルスの感染者が接近したらしい。
ねえ、カプセルから出ないでよ。
わかってるよ。どうせGPS管理されているんだ。
そう、いったい、いつからなのだろう。
ねえ、いつまでシータ波にしてるの?
女が呆れて言う。
その様子を外からAIが見て笑っている。
カプセルにはナンバーがついている。横に「ヒト」と書かれて。
※マイクロチップの埋め込みを人間で最初に試みたのは、1998年。
2019年の記事では人工知能の組み込まれたマイクロチップを埋め込んだ人間は50万人以上とある。
指のチップでドアを開けQRコードで決済する。スマホが指についているようなものだ。
※そして、キーワードはたくさんある
操作するのは誰?
おめでとうございます。あなたはアップグレードされました。