unconscious 脳

完成しない何かを書くADHD脳の片付かない本棚

盗まれた人々

 

ふと見ると
心臓の一部がなくなっていて
風が吹き抜けているのでした


そこは
空洞ではありますが
何かの映像が流れているようで
少し脱力ぎみに
幼い頃に最初に習った
簡単な言葉に
吸引されていくあの
触れない指先の
切なさを感じるような
遠い

遠い空洞なのでした


 
夕暮れは背中の方向に傾きながら
太陽は知らぬまにそうやって
人々の心臓をごっそりと盗んでいくのです

いつだって

 

通りかかった地下鉄の出口は
その真空から溢れるように
地上に生み出していて
同じ方向を見ながら
交わらない線の引かれた路を
覚醒した眠りのように
流れて


 
 そう
 あのあれは
 そうだったのでしょうか 
 


太陽はいよいよ膨張し
ここからは見えない

あの、

地平線を溶かし


その空洞は捲れ上がって
やがて
街とともに
反転してゆく

 

太陽は何を盗んだのか

裏返されたその場所には
無数の欠片が

 

またひとつ