ちっちゃな僕との生活はその後も続いていて、想像つくだろ?そりゃ勝手なんだから。僕の資料が77ばっかりになるし。鍵は冷蔵庫にあるし。時計の針を戻してるし。
キリがない。そんなこと誰にも言える?僕はちっちゃな僕と一緒にいるなんて。
お手上げ。
それでも僕はみんなでテレビを見ながら笑い転げてたり、マニアックな映画すすめてきたり、哲学書やら(寝てしまうくせに)、スカやジャズや、その隣で筋トレしてたり、手をひっぱって夜空の星を指さしてほんとはあれ黒い紙に穴が開けてあるだけなんだよと耳元で囁いたりした。
そんなある日、ひとりの僕が僕の腿を這い上ってきて僕の小指を掴んできたんだ。
握られた小指があんまり熱くて、僕は少しうろたえた。
どうした?
ね、みんなちょっと静かにして。
小さな僕達がピタと動きを止めてふりかえる。
熱だね。体温計する?
ちょっとうれしそうにコクとうなずく。
38度。
僕はグラスに氷を入れて、彼女の置いてったコットンでその額を冷やすことにしたんだ。
小さな僕たちは少しづつ布団のまわりにあつまりはじめて、またいっせいに僕を見上げた。
心配そうにね。
僕はなんだかうれしくなっで、このうえなく優しい顔をして彼らを見渡してみた。
すると、僕達はなぜかフンと知らん顔した。
なんだよ。
けれど小さな僕達は、かわるがわる背伸びをしながら、グラスにコットンを入れている。
あふれちゃうよ。
僕はやっぱりうれしくなって、背伸びした足をつついてみたりした。
ちょっとにらまれたりしてね。
そんな風に、僕らは看病してたんだ。
そのうちに、やっぱり僕の首にぶらさがるやつや、なぜか体温を計っては僕に見せるやつや。
だから、君は平熱だよ。
そうして、僕らはそのうちに眠くなって。
そうみんな眠くなって。
すやすやと眠った。
(そろそろ終わるかな)