もはや僕らはデータとなる。
「安心の為に」
僕は毎朝ランニングをする。
6時間の睡眠の後にカーテンが開くように設定している。陽射しが瞼の上に挿し込む。
気温○○℃湿度○○
スマートコンタクトレンズに表示されている。いい天気だ。
高層マンションが建ち並んでいる。歩道とサイクリングロード、公園、緑化されている。
おはようございます。
S氏がいつものようにマンションの玄関で駐車場から自動で出てくる車を子どもの頭を撫でながら待っている。
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風が気持ちいい。
腕時計が振動する。心拍数が上がってしまった。少しベースを下げよう。
交差点に差し掛かると瞳のレンズに危険サインが出た。急に子供が目の前にあらわれる。どうやらサッカーボールを追いかけてきたようだ。ぶつからなくて良かった。ボールをひろって渡すと笑顔で去っていく。
ビービー。
またアラームが強くなる。100m先を歩く男性に熱があるようだ。ドローンが感知して彼を止め、指示を出している。
最近またウィルスの種類が少し増えたようだ。良かった。彼に近つかなくて。
右への→マークが出た。五キロ走るにはこのルートがいいらしい。方向音痴の僕にこのコンタクトレンズが行き先を示してくれる。
コンビニ前で、さっきの熱の男がストップをかけられている。ウィルス顔認証のデータがもう街に回ったようだ。しばらくは彼はどこにも行けないだろう。
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安心だ。
この街には広大な農地もある。作物は害虫のつかない種子が使われている。種子法が変わったのはいつだったか。
水や肥料が天候を数値化してオートで管理している。スーツを着た農家の友人が手を振っている。僕も手を振る。
ニュースがたくさん入っているようだ。少し休憩しよう。ベンチに座る。
手首でスマートフォン⁉️
— 日本トランスヒューマニスト協会/h+JP (@transhumanistjp) 2020年3月28日
手首にベルト型デバイスをつけ、スマートフォンとBluetooth通信を行うことで、手首にスマホ画面を表示し、さらに操作することができるようになると非常に便利ですね😄
こういった技術は早く実用化して欲しい者です✨#人のためのテクノロジー pic.twitter.com/n3pK8mVvs6
さて、ランニングを再開しよう。
景色はどんどん視界の横を通り過ぎてゆく。
僕はいつから走っているのだろう。
僕はどこまで行くのだろう。
景色が通り過ぎる。
そう、僕ではなく、景色が通り過ぎる。
移動しているのは僕なのか、道路なのか。
どちらでもいいことだ。
そう、この街はとても安心だ。
……
彼はマシンの上をただ走っている。
ホログラムが通り過ぎていく。
そしてそのデータは常に保存され続けている。
https://kizuna-group.jp/blog/20200110/
好奇心と違和感。
時に僕は好奇心が上回る。
仮想と現実の境界線。
或いは、それは無限に存在するもの。
していたもの。
時間も超越した。
何か。
この波はあたりまえになる。
今までがそうであったように、知らぬまに人は順応していく。或いはさせられていく。
データ。
データではない何か。
それは今だから見える何か。
かもしれない。