浴室に私はいる。
顔だけを水面から出し、瞳を閉じる。髪は放射線に解放され、私から離れてゆく。心臓の音が微かに聞こえる。
映像が時間とともに積み重なり、一人の人間が製作されてゆく。いくつもの層、幾重にもなり、すでにそれらは地下深くに沈んでいる。
形成、私たち自身を形成する。映像、が作動する。意識下でそれは行なわれている。
すべてもはや意志ではない。ただ、深く層になった形。
美しくもあり、ひどく脆くもある。
心臓は浴槽に浮かんでいる。
既にユニットバスに溶け込んだ映像は液体となり、心臓の鼓動を時間のぶんだけを静かに進めている。
それを見ている。
女、そう女だ。
女は瞳をゆっくりと開ける。換気扇、ユニットバスの白い壁。視界が仕切られる。視界が脳を仕切る。
上向きに沈めた上半身を浴槽から起こしてゆく。水面から出た冷えた脚、それは細く質感が落ちている、それでも女が最もお気に入りの脚、それを既にぬるくなった湯に戻す。
キューブの中。
終わらないいくつものキューブ。