unconscious 脳

完成しない何かを書くADHD脳の片付かない本棚~Energy is circulating

ピンクマシンガン

11時55分。
コピー機の上の壁に設置された四角い白い時計は一日のうち二番目の緊迫感を感じている。
さながらオリンピック陸上100M競技のスターターの気分だ。
スタート地点というのは常に忘れられる存在だが、一斉に彼女達が立ち上がった時すでにオフィスの存在は忘れられている。
ビルの谷間、ヴィトンのお財布を抱えたピンクの制服はすでに戦闘態勢に入っている。
パスタ屋のテーブルの上にはそれぞれのマシンガンが置かれている。
それがまだ発砲されないのは、暗黙のルールが守られているからだ。
どうやら本日のパスタはお気に召さないらしい。
笑顔の優しい色白の少年ウェイターが辞めてから、彼女たちの味覚は敏感になり、新しく入った黒髪のウェイトレスに、これアンチョビ多めにしてくれる?とかアルデンテ過ぎないでくれる?とか言った。
はい、かしこまりました。
それは発砲の合図。

ねえ、見た?
彼女達の観察眼があれば、課長の企画も取り上げられるかもしれないが、悲しいことに本日一人目の的となった。
それはいつもの爆笑で幕を閉じ、近頃のメインへと的は変わってる。
ね、M先輩本社配属決まってからあれよね、わかるー、仕事命みたいなやだぁ、今日のマスカラ見た?


ふう、

ランチタイムは無数の戦場。
オフィスビルは次から次へと人々を生み出している。
一体、この人口の何パーセントの脳がこんな事項で埋め尽くされてるんだろう。
世界はいつもそんな事項で占められて、歴史が作られている。

パスタは、せっせと口の中にに入ってゆきながら、彼女達の生命を維持し、同時に器用に高速な口は絶えず言葉を発し、もはやそれは抽象画と化している。
窓の外は曇り空。
パスタ皿が下げられてから数十分。


ね、きっとさびしいのよ。
銃撃戦を制止める奥の手を出す。

沈黙。

そうかもしれませんね、先輩っ。


ピンクマシンガンは皆かわいく性能がいい。
もし、君が君のさびしさを認めるなら、その性能を生かしていけるよ。

 


ねえ、ヒトラー
さびしかったんでしょ

 

その夕方オフィスの四角い時計が一日のうちの最高の悦楽を感じた後。
残業。パソコン打ち込み中、私は女子ロッカーで連射されている。