unconscious 脳

完成しない何かを書くADHD脳の片付かない本棚~Energy is circulating

僕がいっぱいいる 4

と、その暗さにあるいは周囲が視線を一定方向に釘づけられたのを見計らったように、またしてもいっせいに小さな僕たちがポケットから這い出した。

 

僕は慌てふためいて、それは当然のことで、映画などより周囲の視線がこちらに釘づけになっては、映画館側としても困るのだ。
だがしかし、後方の観るべき映画を選択し間違えたような老夫婦も、横の部下に見下げられ仕事をさぼりにきたサラリーマンにも気付かれた様子はなかった。
ましてや僕の彼女など手のひらに乗せていても気付きそうもなかった。
とはいっても彼女の場合、映画にとり憑かれたわけではないこともはっきりしていた。
なぜなら、幾度もこちらが誰かに頭を下げたいくらいに身体をよじらせ、僕の手をぎゅっと握り、時には頭を僕の肩に、かと思うとまるで僕には無関心に、どうやら彼女を一定時間同じ状態にすることは不可能と思われた。
そしてこの映画の最もクライマックスにさしかかると、トイレに行ってくるわと立ち上がる始末だった。映画監督に僕は同情の意を表した。

 

その間の小さな僕達の行動をいちいち挙げるべくもなく、サラリーマンのネクタイにぶらさがっていたとか、とにかく僕はもうヘトヘトだった。

 

 

(も少し続く感じです)