unconscious 脳

完成しない何かを書くADHD脳の片付かない本棚~Energy is circulating

小説「断層」

「断層」10 ドア

そのドアを開けたのはいつだったか。殺したヤツがKの携帯を使ってあんたに電話してるんじゃないのか? いくつかのドア。そしてドア。 騒音のようなリズム。這うような高揚。異空間は突然に訪れる。フロアは真鍮の柱、アールデコ調の装飾、全面の鏡、それら…

「断層」9 そして夜

その夜、No.3の誕生日で店はごった返していた。店頭に飾られる花の本数が競われる。No.2が携帯を片手に不機嫌そうに花の前に立っているのが見える。その横に二人女の子がいる。なんであの子に花あげてんのよ。と言うNo.2の声が聞こえた。二人の女の子は腕組…

「断層」8 夜 

二人かがりで帯を左右からキツく締めると、後襟 をグイと引っ張り、脇腹の辺りをパンと弾くよう に叩いた。 いい女になってきたわね。 わかるのよ、長年こうして何人も着物を着せてい ると。今日は帯、下目に着けたの、わかる?。 女、麗と呼ばれた、夜は。 …

「断層」1 脳

脳が溶解するような夏が欲しい、と思った。 四個目のの太陽。 空気の密度の薄い縦縞の夏。遠く冷たい海。発散しない肌。それでもその日は窓を開け放っても空気は歪むようで、露出の分だけ肌に汗を感じた。川沿いから吹く風もわずかだった。 休日、女は白い脚…

「断層」7 取調室

お前が殺したんだろ。 女の目の前には、一枚の写真が置かれている。スーツを着た若い男。ネクタイはしていない。胸元、肌が見える。茶髪。真っすぐに立ったつもりらしいが、少し右肩が傾いている。警察署で撮られたものらしい。初めて見る写真だが、確かにこ…

「断層」3 海綿

どれだけの時が経ったのかわからない。数秒も経っていないのかもしれない。ただ耳の中を蝉が支配し、時は停止したようだった。 公園の声が蝉を掻き消した時、少女は瞳を見開き後ろを見た。風が瞳を刺した。駈けた。 ぬかるみに脚をとられながら、深い草地か…

「断層」2 少女

あの少女。 白い脚。 公園の裏手を流れる小さな川沿いは、夏に雑草が生い茂る。長く雨が続いた。水溜まりの残る公園に子供達の声が響いている。 公園を走り回る少年たちの横には、ブランコをベンチ代わりにした三人の少女がいる。一人は、腰に手をあてすでに…

「断層」6 K

女、そう女。 女は瞳をゆっくりと開ける。換気扇、ユニットバスの白い壁。視界が仕切られる。視界が脳を仕切る。上向きに沈めた上半身を浴槽から起こしてゆく。水面から出た冷えた脚、それは細く質感が落ちている、それでも女が最もお気に入りの脚、それを既…

「断層」5 浴室

浴室に私はいる。顔だけを水面から出し、瞳を閉じる。髪は放射線に解放され、私から離れてゆく。心臓の音が微かに聞こえる。 映像が時間とともに積み重なり、一人の人間が作られる。いくつもの層、幾重にもなり、すでにそれらは地下深くに沈んでいる。取り出…